■2月29日のナミダ
友人のブログに、2月29日の日付で書ける日記は4年に1度なのだ、と書いてあった。
それもそうだな、となんだかえらく感心してしまいました。今年32歳になった2月29日生まれの友人は、今日8歳を迎えたのだなぁ。おめでとう。
*
OL稼業、危うし。
先日から立て続けにミスを連発。クビにならないのが不思議なくらい。今日は、小切手をぶっちぎるという考えられないミスをしでかしてしまいました。家でもやらない、そんなこと。家で小切手を扱うことはないけれど。ありえない。考えられない。
自分に愕然。
どうにもこうにも「ミスの神様」がついているような気がしてなりません。
失敗するまいするまいするまいと思っていると、驚くべき確率で失敗する。私は上司を早死にさせるかもしれない。これはもう辞表を出すのが大人のマナーってもんじゃないか、などと真剣に考えてしまいました。
*
愕然としたまま帰路につきました。
愕然としたまま帰路についたものだから、買おうと思っていたイヤホン、違う種類のものを買ってしまいました。まあ聞けるからいいけれどね・・・・。
ターミナル駅で、しゃがみこんでいる女性を発見。タオルで顔を覆い、震えている。
愕然としているので、愕然としたまま通り過ぎました。通り過ぎ、エスカレーターで登って・・・・Uターンしてエスカレーターで下りました。
「だいじょうぶですか」
声をかけました。
私はしょっちゅう電車でぶっ倒れていたので、同じように具合が悪いんじゃないかと思ったのです。だったら駅員さんを呼んで、休めるところへ連れて行ってあげたほうがいいんじゃないか、と。
「駅員さん、呼びましょうか」
彼女ははっと顔を上げました。その顔を見て私もはっとしました。
すっごく泣いています。
大きな目から、大きな涙がボロボロと。
な、泣いてる! どうしよう! ただごとではないかもしれない!
ぎょっとした私に、彼女は
「すごく悲しいことがあったんです」
と答えました。その返答にさらに「どうしよう!」と思いました。はい、正直に書きます。ほんとうに、これはどうしよう! と思ったのです。
だって、見知らぬ人に、「悲しいことがあった」と泣きながら訴えられてしまった。私が声をかけたのだけれども。
彼女は追い討ちをかけるように、
「ほんとうにほんとうに悲しいことがあったんです」
という。
ああ、どうしたら。
年齢は20代後半。フツウのOLさん風。すごく可愛い。そして、ボロボロ泣いて、悲しいのだという。
脳みそが空っぽになりました。
具合が悪いのならば駅員さんを呼んで、連れて行ってあげればいい。
でも、悲しいのなら? こんなに悲しいのなら????? 実際ひどく悲しそうだよ?????
どうしたら良いのかさっぱり分からなくなってしまいました。なにがあったのですか、と聞いていいのだろうか。でも聞いてはいけないだろうか。いやむしろ、聞いてあげたところで何かできるんだろうか。いや、そんな器ではなかろう。
一瞬にしてあれこれ考えた挙句、こともあろうか、そして自然に、コートの左ポケットから、先日のWerther's Originalキャンディーを出していました。たったひとつぶ。ひとつぶしかなかったのです。
それを彼女に差し出しました。
「あの、これ、おいしいですよ」
ああ、もはや意味が分かりません。自分が何を言っているのかも分かりません。
「すごく甘いんで」
周りの人がジロジロ見ています。
「これ食べて、元気出してください」
そうして、彼女の手のひらにキャンディーを置いて、「元気出してくださいね」ともう1度言って、そのまま元来た道を戻りました。
彼女はさらに涙を流してしまい、「ありがとうございます」と言っていました。
*
泣いている子供をなぐさめるわけじゃあるまいし!
キャンディーひとつ渡すしかできないとは。もっと大人の女としてできることはあったんじゃないか、と電車に揺られながら考えました。でもやはり、話を聞いてあげるべきだったのかどうかが分かりません。偽善? とか考えるともっと分かりません。
「わかります、私も今日、小切手ぶっちぎっちゃったんですけれど、お互い、まあ元気にいきましょうよ」
とか言えばよかったのだろうか。いや、わからん。むしろ、話しかけられたくなかったのではないか、とも考えられる。失礼だったんじゃないか、とか。ああああ!
ただ分かるのは、とにもかくにも彼女がほんとうにほんとうに悲しそうで、つらそうで、それが空気感染しそうなくらいで、そしてWerther's Originalキャンディーの甘さは役に立つのではないかとそのとき本気で思ったこと。
結果的には何か助けてあげたかったけれど、私には何もできなかった、ってことです。
まさに、祈ることしか。どうか彼女の悲しみが少しでも和らぎますように。もちろん神様じゃないし、何かの信者でもないし、私が祈ったってあれですけれども、まあ、とにかく。
彼女のすごく大きな悲しみに対面したとき、なぜだか何ともいえないショックを受けたのですが、同時に仕事のミスで愕然としまくっている自分がちっちゃく思えた。たぶん、この人の悲しみにしてみたら、ほんとうにどうでもいいことだろう、と。
うーん、どこかでまだ泣いているかもしれないその女の人が、少しでも今はさっきより悲しくないといいのだけれどなあ。。。。
*
そんな2月の最終日。
えらいスピードでお誕生月が過ぎてしまった。2月の準備をしようと思っていたら終わり、という気分。3月の最終日はOL稼業をしているのだろうか。怪しい。
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